Sig’s Book Diary

関心本の収集

『女ひとり寿司』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/fad189d7685e328ae157f71cfc6268aa
湯山 玲子、2009、『女ひとり寿司』、幻冬舎 (幻冬舎文庫)

友人に読むようすすめられた。本書の解説によると上野千鶴子のいわく、「グルメ談義と見せかけた最強のフェミ本」。
確かに、寿司屋は著者のいうように、客層にはほかの店種と異なる類型があるようだ。ましてや、本書のターゲットの「高級寿司」ともなると、接待や同伴、ステータスを意識した客、グルメなど観察の種には事欠かない。くわえて、著者の「女ひとり」というのは、寿司屋にとっても珍しい客層であり、他の客からしても目を引く対象であることは確実である。
わたしは、解説者の述べるほど「最強のフェミ本」とは思わなかった。むしろ、寿司屋の客の連れである女性という類型とのバトル(といって、著者が感じる女性客からのまなざしについての著者による解釈なのだが)が興味深かった「女の敵は女である」という、これまた、ありがちな感想を持ってしまったのだが、そうした状況に追い込まれていることそのものが、現代日本社会のジェンダーバイアスというべきであろう。それを指して「フェミ本」ということである、ということであるか。本書は寿司の名店の味についてのコメントも然り乍ら、同席するほかの客たち(当然、座るべきはカウンターである)の観察(現代日本社会の縮図となっている)についてのコメントも辛辣で楽しめた。

じつは、書評子は、著者が本書中で大学時代の個人的な出会い経験として紹介する甲南大学の卒業生なのだが、たしかに、友人の中に、いたいた。「女の子を退屈させない、ギャグ満載の話芸」をもち「自然とぼけ役と突っ込み役が決ま」る先輩後輩同級生!あいにく、当方はその手の芸は心得なかったが、しかし、一言付け加えると、同窓の連中には、好みはともかくとしても、結構その手の人材は多かったような気がする。むしろ、大阪人の類型のひとつなのではないか。だいたい、大阪人が2−3人もよれば、阿吽の呼吸で役回りを心得、レベルはともかく、会話は「吉本流」になるのは、当たり前のことなのだから。ガキの頃から、この呼吸がわからないとたいてい、仲間から相手にしてもらえない。というか、一方的に食い物にされるので、否応なく学ばなければならない護身術なんではある。

女ひとり寿司 (幻冬舎文庫)

女ひとり寿司 (幻冬舎文庫)