Sig’s Book Diary

関心本の収集

『風流武辺』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/a6c9b5ad28f1a34670dc76cdd1d41f85
津本 陽、2002、『風流武辺』、朝日新聞社 (朝日文庫)

茶道の宗箇流の創始者、上田宗箇の生涯を描いたのが本書。元々は、NHKの番組で徳島の千秋閣庭園と広島の宗箇流和風堂が紹介されていて、たまたま、最近のマイブームである茶道(といって、茶をたてるのではなく、千利休をめぐる人々に対する興味としての)に引っかかったので、上田宗箇を知りたいと思い、手に取った。
小説だから史実かどうかはおくにしても、本書の主人公であるのは、織田家の家老丹羽長秀の小姓あがりの戦国武将である上田佐太郎が、戦国時代のブームであった茶道を嗜むのはわかるが、かれが、茶道の流派をたて、作庭をするようになるのは、やはり、飛躍がある。本書でも、若い頃の佐太郎の周辺で茶道が触れられることはない。長秀亡き後、秀吉の旗本になった佐太郎が利休の茶会にでて、それまで習った訳でもないのに利休に目をかけられるようになるのは小姓であったからというのは、どうも合点がいかない。秀吉晩年、利休を切腹に追い込むのはアンチ茶道派とでもいうべき三成もまた小姓あがりである。
作庭するようになる伏線も、佐太郎が秀吉に命ぜられて大坂城の城壁の石積みに従事することが描かれるが、これもまたわかりにくい。石積みに携わった者がすべて、作庭ができる訳でもなかろう。
本書ののキャッチは「上田宗箇の修羅と数寄の生涯」というのだが、修羅はおくとしても、数寄はうまく描けていないのではないだろうか。えらく恬淡とした後半生にみえてしまう。千秋閣庭園庭園や和風堂は半端じゃないこだわりに見えるのだけれど。
まだまだ、数寄者への疑問と興味が残ったという意味で、まあ、いいか!!

風流武辺 (朝日文庫)

風流武辺 (朝日文庫)