Sig’s Book Diary

関心本の収集

『名士の系譜:日本養子伝』

新井 えり、2009、『名士の系譜:日本養子伝』、集英社 (集英社新書)

先の総選挙での争点のひとつ、「世襲」と「官僚支配」であったかと思うが、「世襲」議員(本人は選挙区も違うからそうではないというが)の鳩山氏が首相になったから、世襲は何となくうやむやになってしまい、また、官僚支配も、郵便会社の社長に官僚を指名し、また、人事官に人事院総裁ぶくみで官僚OBを指名するなど、ま、あらかじめ予想されたことではあったが、なんなら「七光り禁止」とでもしておけばよかったか。
本書の取り上げる「養子」たちは、まことに、そうそうたる顔ぶれではある。また、日本社会が、じつは、もともとが、実子か養子かではなく、家業(それは、農業や武家や、政治家ももちろん)は、実子に継がすこともあったけれど、存続のためには要旨も当然いとわない、というプラグマティズムがあったればこそ、日本社会の今があるとでも言えようか。なんなら、天皇家だけが万世一系とでもいって、血統をつないでいただき、あとは、養子でつないでいくシステムを構築したほうが、よかろうというものだ。
血脈を継ぐことがよいことか、それとも、技をあるいは業を継ぐことがよいことか、よおく考えてみればよさそうなものだが。

名士の系譜―日本養子伝 (集英社新書)

名士の系譜―日本養子伝 (集英社新書)