Sig’s Book Diary

関心本の収集

『古田織部の茶道』『へうげもの』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/8b91556abd7bb332e375619ae2436c1e

桑田忠親、1990、『古田織部の茶道』、講談社学術文庫
山田芳裕、2005-、『へうげもの』、講談社(モーニングKC)

古田織部、あいにく、彼が戦国の武将であったことと織部焼に名を残していたことをのぞき、ほとんど知識にかけていた。千利休の高名にかくれていたというべきか。私は、茶道に関心もないし、ましてや習ったこともないのだが、マンガの『へうげもの』を読んで、刮目することになった。それで、改めて古田織部のことを知りたく思い『古田織部の茶道』を手に取ったということではある。
中世から近世への革命は、社会階層が逆転する下克上の時代が引き起こしたが、その政治的な主人公、織田信長は、美の世界においても、それまでの価値観を逆転させた。信長とともに世に出た古田織部こと「佐介」もまた、時代の寵児であったというべきか。戦場を駆け、同時に茶道と茶道具に命を燃やす「へうげもの」として、生を全うする人生、最後は大阪夏の陣に関連して、徳川家康切腹を命ぜられ、一族は断絶する。豊臣秀吉に死を命ぜられた千利休が後に名を残しているのにくらべると、いささか、気の毒な気もするが、これも、まさに「へうげもの」としての生を全うしたことになるのだろう。
へうげもの」という呼び名は、マンガの作者が名付けたかと思っていたが、古田織部の茶会で使用した瀬戸の器について「セト茶碗ヒヅミ候也。ヘウゲモノ也」と書かれているそうで(桑田 211頁)、まこと、古田織部の呼び名にふさわしい。

なお『へうげもの』は『モーニング』誌に連載中である。

古田織部の茶道 (講談社学術文庫)

古田織部の茶道 (講談社学術文庫)

へうげもの(1) (モーニング KC)

へうげもの(1) (モーニング KC)