『闇の守り人』
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バルサは故郷のカンバル王国に戻ろうとする。亡くなった養い親のシグロへの思いに決着を付けるためであった。バルサは、新ヨゴ王国へ逃れてきた洞窟を逆にたどって、カンバル王国に向かおうとする。この洞窟には光を嫌う「闇の守り人」ヒョウルがすんでいるので、たいまつを使わず、短槍に記した洞窟の通過ルートを手がかりに、カンバル王国に向かった。ここで、彼女は、カッサとジナという兄妹を助けることから、カンバル王制をめぐる陰謀に巻き込まれていく。
ストーリーは追わないが、本書のテーマは、バルサのシグロ追悼、シグロのいやし、そして、光と陰、正と邪の二項対立である。山場は、ほぼ20年に一度行われてきた「ルイシャ贈りの儀式」である。シグロは、前回、16歳でありながら「王の槍」の勝ち残りとして、ヒョウルとの「槍舞い」を行った。それ以来、35年一度も行われていなかった。兄王を暗殺し王位を襲ったログサム王は一度も「ルイシャ贈りの儀式」を行うことなく身まかった。闇の王はルイシャを送らなかったのである。その意味で、今回の儀式は重要であった。バルサがカンバル王国に向かったのはまさに、シグロの癒しとカンバル王国の聖性の復活あるいはみそぎのためのようであった。
評者は、本書を読みながら、マルセル・グリオールの『青い狐』を思い出した。ずいぶん前にぱらぱら読んで、今、手元にないので、正確なことは書けないのだが、西アフリカ・マリ共和国のドゴン族の祭り「シギ」は60年に一度挙行され、仮面祭りは12年に一度。これらの祭りの際、ドゴンの宇宙観が儀礼の中で再現される。そして、ドゴンたちは再活性される。祭りとはそのような、極めて重要な意味をになうのである。
- 作者: 上橋菜穂子,二木真希子
- 出版社/メーカー: 偕成社
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- 作者: マルセル・グリオール,ジェルメーヌ・ディルラン,坂井信三
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