Sig’s Book Diary

関心本の収集

『坂の上の雲』

司馬 遼太郎、1999、『坂の上の雲〈1-8〉』、文藝春秋 (文春文庫)

以前、ずいぶん前に本書を読んだのだが、昨年からはじまった、スペシャルドラマ「坂の上の雲」をきっかけに再び読み始めた。なにしろ眠くなるまでに読むぐらいだから、なかなか読み進まないうえに、全8巻で1ヶ月以上もかかってしまった。かつて読んだのは、たぶん、20代のころだっただろう。ずいぶん前のことだった。もちろん覚えていなくて、久しぶりの司馬遼太郎節を楽しんだように思う。

ともあれ、本書の時代背景は、明治の日清日露の時代。松山に生まれた秋山兄弟(好古と真之)と正岡子規に焦点を当てるとともに、この時代の日本国家が現在にいたるまで持ち続ける個人と組織のあり方が描かれる。
明治維新により西欧化を目指す日本国家は、軍事も西欧化をすすめる。陸軍は山県有朋が、そして、海軍は山本権兵衛がその基盤を築く。秋山兄弟や正岡子規も、この時代に行き、それぞれの領分で革新的な存在となる。好古はそれまで顧みられることのなかった騎兵をその装備、運用をいちから作り上げる。真之はアメリカ留学時代に米西戦争を観戦し、マハンの戦略を学んで、対馬沖海戦の戦術を練って、バルチック艦隊を殲滅する。子規は結核をおして俳句を革新し、現代俳句への扉をあける。
一方、様々革新が進むと同時に、藩閥や官軍/賊軍の差別、中長期的戦略構想の欠如、現場無視の官僚主義、個人の神格化など、太平洋戦争を超えて現在にまで至る日本社会の宿弊とでもいうべき問題が噴出している様がえがかれる。ネガティブな組織論としての読み方もあるだろう。

ドラマとしては、第1クールの1−5回がおわり、続きは、今年の12月、皿にその続きは、再来年の12月であるという。戦争描写が主となる今年の年末、はてさて、NHKはどのように描くのか。


スペシャルドラマ「坂の上の雲」公式サイト:http://www9.nhk.or.jp/sakanoue/

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)