Sig’s Book Diary

関心本の収集

『〈満洲〉の歴史』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/3ed954a39f5c0711e1310bfd7ea10504
小林 英夫、2008、『〈満洲〉の歴史』、講談社 (講談社現代新書)

ずいぶん前に『満鉄調査部』を読んだことがあって、それ以来、久しぶりに満州国について学ぶことになった。新書ながら、その歴史がよくわかったように思う。
また、新たに理解したこともあった。つまりは、戦後日本の高度成長は、日中戦争から太平洋戦争に至る過程における、満州国の建国から崩壊までの間のコピー、あるいは、太平洋戦争遂行のための国家総動員態勢の非軍事バージョンというべきか。それを担った官僚として満州国の経済体制を担った岸信介椎名悦三郎は、戦後、政治家として日本の高度成長にいたる政治経済体制を担う。こうした歴史の相似形がめについた。
中国大陸にとって、清帝国の揺籃の地である満州は歴史的に辺境であり続け、歴史を通じてモンゴルや女真などの遊牧あるいは狩猟採集の民が行き交っていた。それが、清帝国の誕生とともに、漢民族(漢字文化を担う農耕民)がこの地の開発に主たる役割を担うことになる。清帝国の崩壊後、中華民国軍閥が割拠するなか、日露戦争の後、張作霖/学良父子らと並んで関東軍軍閥のように機能して、満州国を成立させる。この地を直接統治することなく、傀儡政権を樹立して、大日本帝国は人材を送り込み、日本化を目指す。
本書は、戦後、1990年代に至るまで満州国に関わった人々の動きもふくめて満州の歴史を記すのであるが、気になったのは、日本の満州国経営における同化主義の顛末、そのことについての評価がどうであるか、と言う点である。近代国家という当時から現代に至るシステムのグローバリゼーションをになった満州建国と植民地支配ではあったが、そのことをどのように評価したのだろうか。その後、どのように日本の外交に影響したのだろうか。著者の前著『日中戦争』にも記されていることではあるが、やはり、日本はかわっていないということが、気になった。

〈満洲〉の歴史 (講談社現代新書)

〈満洲〉の歴史 (講談社現代新書)