Sig’s Book Diary

関心本の収集

『プリオン説はほんとうか?:タンパク質病原体説をめぐるミステリー』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/5b99f764399f0586183f480023bc189f

福岡伸一、2005、『プリオン説はほんとうか?:タンパク質病原体説をめぐるミステリー』、講談社ブルーバックス

ノーベル賞受賞者まで出したプリオン病(羊のスクレーピー病や牛の狂牛病、人のクロイツフェルト・ヤコブ病などの原因となる異常性タンパク質が病原体であるとするもの)について、まだまだ不明であると告発をつづける本書は、こうした一般書にはない難しい内容を含んでいるが、その謎解きのプロセスは並の推理小説をはるかに超える。

病原体の解明でノーベル賞が贈られたということは、ほぼ確定と思いたいところだが、まだまだ、不明な点が多いという。本書の疑点の列挙は、非常に明快である。ノーベル賞授賞にたいして疑義を提起しているわけだから、研究費をだす権威の側は、著者の問題提起は、うけいれられず、研究費の獲得が難しいのかもしれないが、本書でも問題提起されるC型肝炎の解明のプロセスを見ても、息の長い研究が必要であると思われる。

ネットを見ると「プリオン病」は確定したかのような印象を受ける。しかし、異常性プリオンと正常プリオンの分子構造のイメージを掲載しているサイトをみても、本書で示されたように、電子顕微鏡などでの解析では、ノーベル賞学者のプルシナーが示した構造図は適切ではないようであるにもかかわらず、訂正されている訳ではなく、プルシナーの示したものである。まあ、日本の学会は長いものに巻かれる傾向、あるいは、権威に従う傾向があるだろうから、本書のような告発調のものは、無視されがちであるのかもしれない。
しかし、自然科学のもまた、社会的産物であって、権威が「科学的真理」をゆがめるもの、あるいは、「科学的真理」も歴史や社会の合意のひとつであることを考えれば、常に、反証を持って疑点を明らかにし続けることこそ、きわめて大切な科学的精神であろう。

若手の研究者、あるいは、高校生や大学生、読むべし!