Sig’s Book Diary

関心本の収集

『神の守り人』『神の守り人』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/1ffc5a9a0b8950c318cfc45ed0727bdf

上橋菜穂子、2003、『神の守り人<来訪編>』、偕成社
上橋菜穂子、2003、『神の守り人<帰還編>』、偕成社

ロタ王国で助けてしまったアスラは、歴史の中に鎮められていた荒ぶる神「タルハマヤ」の「神を招く者」チャマウだった。ロタ王権は「タルマハヤ」を殺すことで権力を得た。そして、神を信奉していたタルの人々は被抑圧民となって彼らに災いをもたらす荒ぶる神をこの世に出現しないように鎮め込み、タルの人々と同様、呪力を持つのシャハルは、ロタ王権を支える秘密組織として、王権を守ると同時に、荒ぶる神の出現の兆候を探りながらタルを監視していた。しかし、シャハルの長の娘、シハナは荒ぶる神の暴力の威力と秘密を知り、これをロタ王国の王権の維持ノタメに用いようとする。
本編もまた、対構造が各所に存在する。支配者であるロタ王権は荒ぶる神「タルハマヤ」と対をなす。支配者のロタの人々被支配のタルの人々、陽の王権に対し、陰となる人々にも、タルとシャハルの対構造が。また、王ヨーサムと王弟のイーハン対構造も。しかし、対構造の境界にたった人々が、静的な構造をかき乱し、再び暴力と混沌を招き寄せてしまう。王弟イーハンは、タルの女トリーシアと道ならぬ恋に落ち、王権側にたつはずのシハナはあえて、荒ぶる神を引き寄せることで権力の強化を図ろうとする。その他多くの境界をまたぐ糸が凶事を招いてしまう。
主人公はバルサではむしろなく、「タルハマヤ」を「招く者」でありながらも、権力と暴力の狭間を揺れ動きながらもあえて、「招かない」ことを選択することで再び、安定構造を招くという決断をしたアスラが主人公なのだろう。

神の守り人<来訪編> (偕成社ワンダーランド(28))

神の守り人<来訪編> (偕成社ワンダーランド(28))

神の守り人<帰還編> (偕成社ワンダーランド(29))

神の守り人<帰還編> (偕成社ワンダーランド(29))