Sig’s Book Diary

関心本の収集

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阿部真大、2006、『搾取される若者たち:バイク便ライダーは見た!』、集英社新書

休学中にバイク便ライダーになってバイク便会社に働く若者の現状について分析を行ったのが本書。ニートやひきこもり、あるいは、格差社会といったキーワードがあふれる現代社会の若者の労働観について分析を試みている。「働かない」で「やる気のない」若者の姿ではなく、「働きすぎ」で「やる気ありすぎ」の若者の姿を見出し、問題はワークホリックの問題であるとする。そして、ひきこもりもワークホリックも表裏一体の問題で、団塊の世代ジュニアが抱える大きな問題として捉えようというのである。
読んでいるうちに、気がついたが、ちょっと図式的に過ぎやしないかということ。世代論になってしまっていて、面白くない。たとえば、こういう風には考えられないのか。つまり、世代論の背後にある問題、つまり、生きがいや働きがいといった、人生の目的を考えるようになったのは、どういう背景によるのかということ。おそらく、これは、近代の病というべきものだろう。これは、右も左も同じ。
前夜に評した文革世代の下放先での彼らの行動、森を燃やし、木を切り、そして、毛沢東への参加をうたい、都市への回帰を願う。彼らは、毛沢東に認められたかった(あるいは、そのように生きなければならなかった)、森を切り開くことは、革命を推進することであり、その尖兵となることは名誉。バイクライダーの生きがいはすり抜けのテクニックであり、先輩歩合ライダーの配車係の課題をこなす生きがいをこなすこととは、違うように見えているが、実は、一緒なのではないか。
われわれは、生きがいが果たして必要なのだろうか。著者が献辞をささげている一人の上野千鶴子アイデンティティについてもすでに疑いを提示しているではないか。もう少し掘り下げよう。

でも、ライダーたちの生態は大変面白かった。エスノグラフィーとしてもっと書き込んでもらいたい。これまた、献辞をささげている佐藤郁哉を目指そう。

搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た! (集英社新書)

搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た! (集英社新書)