Sig’s Book Diary

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『私の紅衛兵時代:ある映画監督の青春』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/8257525d1ca799478b614af15612af33

陳凱歌、2006、『私の紅衛兵時代:ある映画監督の青春』、講談社現代新書
(1990年、初版。今回は増補版)

私は著者の陳凱歌と同世代、日本と中国とはいえ、同じような風のにおいをかいだ。中学生の時の文化大革命は大ニュースだったし、毛沢東は英雄だった。そして、紅衛兵のスローガンの一部はわれわれのものだった。「造反有理」。
社会の決まりことに反抗するとき使った。紅衛兵では、もちろんなかったけれど。高校3年の時には大学紛争が相次いだ。同級生の中には、大学生や労働者に混じって、メットとゲバ棒をもって大阪や京都にいった者もいた。大学生になったときには、学生運動は下火にはなっていたが、それでも、4年の時には封鎖があった。
もちろん、陳凱歌の体験はそれをはるかに超える。文化大革命の嵐は、あらゆる価値観を覆し、おそらく、今も心に生傷が残っていることだろう。陳凱歌の経験に比べたら、私のそれは、単なるにおいをかいだだけに過ぎない。本書をよんで感じたことは、人間の持つ普遍的なおろかさということか。これまで、文化大革命に限らず、どれほど、血が流れ、価値観が転倒し、そして、そ知らぬ顔で同じ人が別のスローガンを叫んでいることか。何も変わらぬ、変わらないのは何か。陳凱歌は映画でそれを描く。
陳凱歌は、下放先の雲南省シーサンパンナで自然の営みとタイ族の暮らしをみて、変わらないものを見出したようだ。彼の映画の原点が本書に描かれる。

いうまでもない現代中国映画の大家、である。陳凱歌の13歳からの青春を回顧した作品。革命を経験したこれも映画監督であった父の陳懐皚の長男として生まれ、大躍進の失敗の後の飢饉、文化大革命下放などを経て、監督としてデビュー、『黄色い大地』(1984)で鮮烈な国際デビューを飾った。これまで、ほかに、『大閲兵』(1985)、『さらば、わが愛 覇王別姫』(1993)をみたことがある。最近、陳凱歌の作品を見ていないことに気がついた。またみてみよう。また、陳凱歌の初期作品でカメラを握った張芸謀の作品も。

紅衛兵」の漢字変換をしようとしたが、一度には出てこなかった。そういえば、コンピュータで漢字変換をはじめてからこれまで、「紅衛兵」の文字を使ったことはなかったような気がする。もちろん、これまで、この文字を使う必要がなかったからで、まさに歴史になったということか。2006年は文化大革命40周年という。

私の紅衛兵時代-ある映画監督の青春 (講談社現代新書)

私の紅衛兵時代-ある映画監督の青春 (講談社現代新書)