Sig’s Book Diary

関心本の収集

『「密息」で身体が変わる』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/5af88cd528631e1b51402883fb936bd3
中村明一、2006、『「密息」で身体が変わる』、新潮社

虚無僧尺八の奏者であり、バークレー音楽院で学んだミュージシャンの中村明一が日本古来の呼吸法「密息」を中心に日本文化論を語った。
率直にいって、日本文化論としてはあまり面白くない。むしろ、彼の「密息」とのとの出会いやバークレー音楽院にはじまる尺八と「外国」音楽(あるいは、リズム)とのクロスオーバーについての記述が興味深い。
世界に様々な呼吸法が存在し、呼吸法が身体技法にかかわるという点、その通りで、これまた興味深い。比較呼吸法というジャンルも想定しうると思われる。おそらくは、どれが優れたということではなく、むしろ、身体技法の違いやそれにかかわる文化的多様性が興味深いところであろう。「密息」をマスターしたら世界が変わって見えたり、俊速の技が飛び出したりするというのはないだろう。
私は、オーストラリアの先住民に強い関心を抱いているが、彼らの楽器ディジャリドゥー(イダキ)のノンブレス奏法と尺八のノンブレス奏法の比較が興味深い。著者の次作はそうした、奏法の比較を期待したい。日本文化論はまあ、いいでしょう。

「密息」で身体が変わる (新潮選書)

「密息」で身体が変わる (新潮選書)