Sig’s Book Diary

関心本の収集

『わたしを離さないで 』

カズオ・イシグロ、2008、『わたしを離さないで 』、早川書房(ハヤカワepi文庫)

イシグロの淡々とした記述は、まことに、ベッドサイドに置くにふさわしい読み物であったが(なかなか読み進めなかったことの言い訳)、半ばを過ぎて仕掛けが読めてきて、俄然、読み進めたくなり、睡眠時間を削ることになった。
キャス(キャシー)という「介護人」の女性のモノローグとして物語が進む。キャスが子供のころに過ごしたヘールシャムという寄宿学校での暮らし、トミーとルースたち仲間とのさまざまな会話、先生たちとの出会い、謎めいたマダムの存在、これらの挿話が淡々と描かれていく。「介護人」と「提供者」がキーワードで、ヘールシャムの寄宿学校の存在が物語の焦点である。

背景として、非常にアップツーデートなトピックを文学に潜ませ、読者に鋭く問題を切りつける本書、味わって読むべし。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)