Sig’s Book Diary

関心本の収集

『マグネシウム文明論』

矢部 孝,山路 達也、2009、『マグネシウム文明論』、PHP研究所(PHP新書)

まるでSFのような近未来文明論なのだが、本書を読むとフィクションではないという気がしてくる。水資源不足問題、化石燃料枯渇問題、二酸化炭素排出問題といういわば現代社会の最大の技術的難関を太陽エネルギー利用、太陽光励起レーザー、マグネシウムによるエネルギー循環システムの構築によって解決しようという著者(矢部孝・東工大教授)の熱い語りが、難関の突破口であると思えてくる。もちろん、これから先も障害がいくらもありそうだけれども。まるで永久機関のようなモデリングは、うまくいくのかとも思えるのだが。

興味深いのは、著者のとるのは、文部科学省などの研究資金をとって研究計画を進めるというアカデミズムの常套手段ではなく、ビジネスモデルとして企業化するというストレートな計画は、これまた魅力的に響く。事業仕分けなど、おそらく無関係なのだろう。もちろん、きっと文部科学省の審査では、通らなかったから、直接的な企業化の手法をとらざるを得なかったのだろうと推測するが。
くわえて、少々心寒く思えるのは、著者のこれまでの研究は、海外で認められてはじめて、国内でも関心を呼ぶという流れであったということだ。やはり、黒船がこないと変わらないというのは、これは日本社会の宿痾としかいいようがない。

本田財団における矢部孝教授の講演録(pdf):http://www.hondafoundation.jp/library/pdfs/No.126.pdf

マグネシウム文明論 (PHP新書)

マグネシウム文明論 (PHP新書)