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『日本の女帝の物語:あまりにも現代的な古代の六人の女帝達』

橋本 治、2009、『日本の女帝の物語:あまりにも現代的な古代の六人の女帝達』、集英社 (集英社新書 506B)

秋篠宮に男子が生まれた途端に、それまでの皇室の後継者問題は沈静化したかに見える。一時、直系男子長子相続ではなく、ヨーロッパ王室に見られる、長子相続(女性も含む)も検討されたこともあったであろうが、今はどのようになったか。直系男子による相続が神武天皇以来のY染色体の継承であるがゆえに、男系相続は譲れない一線であるといった、?マーク付きの議論さえあった。そもそも血統が脈々とつながるというのは物語としてはありうるとしても、はたして、生物学的には、どうであったか。
ともあれ、本書は、飛鳥奈良時代における女帝の時代における女帝の権力への意思、くわえて、女帝を担ぐことによって権力を維持しようとする勢力の闘争に焦点を当てて論じたものである。推古、持統、皇極/斉明、元明、元正、孝謙/称徳の6人、8代の女帝たちをめぐる権力闘争を描く。女帝の位置づけとして、天皇の一族であるか、同時に皇后であるか、などを条件としながら、皇位の中継役であることが期待されているが、それでも他に男性の天皇候補者が存在するにもかかわらず、即位することが求められる。
たとえば、持統は夫の天武が崩御したとき、皇太子であったはずの息子の草壁皇子がいるにもかかわらず即位し、壬申の乱に勝利した天武朝の屋台骨を支える。中継ぎといっても強烈である。さらに、息子の草壁が亡くなると、孫の文武が後をつくまで皇位を維持する。文武が崩御すると、皇太子の聖武が幼いので、文武の母の元明が即位する。そして、元明が引いて上皇になると娘(聖武の伯母)の元正が即位するのである。
あらためて、この時代の皇位継承の物語を読む見直すと、なかなか面白いが、現代にもし、女帝が誕生するとしたら、どのような位置づけとなるのか。過去の例は、女帝は天皇の一族と婚姻関係にあるか、もしくは、独身である。女帝の配偶者が誰になるか、これが大きな問題ではある。