Sig’s Book Diary

関心本の収集

『りかさん 』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/462e6c09735e2e9d3803df236f32a57d
梨木 香歩、2003、『りかさん 』、新潮社(新潮文庫)

内容的には『りかさん』のほうが、『からくりからくさ』よりも早いのだが、出版されたのは、『からくりからくさ』の方が先なので、出版順で読んでいる。
本書は、『りかさん』『ミケルの庭』の二作品が収録されている。前者は、主人公の「ようこ」(『からくりからくさ』では「蓉子」となっていて、主人公の年齢に合わせた仕掛けかと思われる)が「リカちゃん人形」が欲しいといったのに「おばあちゃん」は市松人形をくれてそれを「りかさん」と名付けるいきさつおよび、「りかさん」との会話(といって、誰もに聞こえる訳ではなく、「ようこ」と「おばあちゃん」だけができる)し、「りかさん」の手助けをかりながら、ものの持つこころを学びながら成長する様子が綴られる。
『からくりからくさ』がおとなになった「ようこ」(蓉子)の友人たちとの物語が、染織や人形といったものとの関わりが描かれるのだが、その前提となる物語が『りかさん』という訳である。
もうひとつの作品の『ミケルの庭』は『からくりからくさ』の後日談で、マーガレットの息子のミケルを彼女の留守中、かわって育てる蓉子ら三人の物語となっている。ミケルの父とつきあっていた紀久の嫉妬とも悪意ともみえる思いが、ミケルを危機に陥れ、同時に救済する。そして、紀久は自分の心の中のわだかまりを理解して成長を遂げるのである。
中編と短編ながら、本書の二作品は、人間の心の問題やものとの関わりが描かれていて、子供向けにも見えるが、大人のファンタジーとして読まれるべきなのだろう。やはり、作品の書かれた順に読んだ方がはまりがよいようだ。しかし、おばあちゃんと「りかさん」の関わりに焦点を当てた作品(蓉子が生まれる前)や「ミケル」が成長し、蓉子らとの関わり(後日談)もまた読みたいものだと思う。

りかさん (新潮文庫)

りかさん (新潮文庫)