Sig’s Book Diary

関心本の収集

『正しく知る地球温暖化:誤った地球温暖化論に惑わされないために』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/6c9777662d03134be3c6a1599cc4e414
赤祖父 俊一、2008、『正しく知る地球温暖化:誤った地球温暖化論に惑わされないために』、誠文堂新光社

本書は、最近の温暖化論議について感情的なあるいは、先入観に導かれた議論ではなく、客観的なデータを用いて議論をするべきと警鐘を鳴らす。問題は、 IPCCの政策提言にある。すなわち温暖化の原因となるのは二酸化炭素の増加であり、二酸化炭素の排出を制限する必要がある。そのことは気候変動モデルによるスーパー・コンピュータによるシミュレーションによって明らかである、とするのである。
しかし、本書は、それに対して、温暖化が起きている状況を否定しようとするのではなく、現在の温暖化は、人間の二酸化炭素排出による温暖化による気候変動ではなく、もっとマクロな気候変動によるものであることを、仮説を立てて議論をすべきであるとする。
現在は、1800年代の小氷期からの立ち直りで継続して過去200年にわたって温暖化が続いている時期であること、そして、現在の温暖期や小氷期を含み、完新世における氷河サイクルの最後の氷河が終わって小さな波を繰り返しながらマクロには温暖化が進行しているのが現在であって、やがては、小氷期やあるいは次の氷河期が遅かれ早かれやってくる。これとても、どのようなメカニズムによってそうした寒暖の長期のサイクルがうまれるのかまだまだ明らかでない。それを、200年前ほどにおわった小氷期もモデルに入れることなく過去30年ほどのデータに基づいてコンピュータ・シミュレーションがおこなわれて、温暖化が過激に演出されてしまっている。さらにそれをマスメディアが騒ぎ立て、また、政府間協議によって排出規制あるいは排出権取引と言ったグローバル経済の枠組みの中で解決しようとしている。
こうした状況は自然科学の研究モデルからも逸脱しており、このことを本書は警告する。本書には、たくさんのデータを示すグラフが提示されていて、わかりやすく現在の温暖化のもつ地球的意味を理解することができる。おそらくは、温暖化は制御することがおそらく無理な惑星システム規模の現象であり、それよりも、現代文明を維持基盤である炭素燃料(石炭、石油)に依存したエネルギーシステムが問題なのであり、化石燃料を燃やして二酸化炭素を増やすことが問題なのではなく、資源が枯渇してしまうことが問題である。そして、それは、当然バイオ燃料のような代替燃料に置き換えたところで、問題は解決しない。さらには、グローバル経済の進展で、生産コストの削減のためには、生産拠点を発展途上国に移管しようとするのだが、二酸化炭素排出規制の陳腐なことは、こうしたアウトソーシング自体、排出規制につながらず、生産規模全体の縮小やライフスタイルを変化させる以外には手はないのではないか。

正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために

正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために