Sig’s Book Diary

関心本の収集

『日中戦争:殲滅戦から消耗戦へ』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/4aa1db2e602d10ef894a7d40a19e5715
小林 英夫、2007、『日中戦争:殲滅戦から消耗戦へ』、講談社講談社現代新書

日本軍の発想は、というか、日本人の発想は島国での勢力争いをふまえた戦略として、「殲滅戦」(勝ちか負けかを決する決戦を発想する)をつねに選んできてきた。そうした、「殲滅戦」以外経験がない「消耗戦」へと引きずり込まれたのが日中戦争であった。中国(中華民国蒋介石)は、はなから、懐の広い中国の大地に日本軍を引き込み、消耗させ国際世論を見方につけるようにする。決戦しかない日本は情報漏洩を恐れ、雌雄を決しようとする。一方、情報を外国特派員らに公開することいよって、まずいことも書かれるにせよ、国際世論に訴える報道をさせる。

南京大虐殺についても、現在でも日本は相変わらず、あったとかなかったとかを問題にしようとするが、これは、事実がどうであれ、むしろ国際的にどう受け取られてきたかを理解していないことがそもそも、致命的な欠陥である。常に、正か非かを問いかけてしまって、墓穴を掘ってしまう。誠に政治的ではない。
国内の論理も、常に正か非かの論理になってしまうところが、いつまでも、殲滅戦の発想が抜けきれないともいうべきであろうか。

本書は、日中戦争についての分析ではあるが、現代的な問題である。国会議員諸氏は、自民党民主党をとわず、心して読むべきであろう。

日中戦争 殲滅戦から消耗戦へ (講談社現代新書)

日中戦争 殲滅戦から消耗戦へ (講談社現代新書)