Sig’s Book Diary

関心本の収集

DVD『不都合な真実』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/6efd833f5049fd36e1c1877d0169eb91

DVD『不都合な真実』、2006、パラマウント映画

アル・ゴア元副大統領による地球温暖化に関する教育用DVD。彼の持続する強い意志が感じられた。彼の政治家としてのキャリアが、とって付けた権力への意思ではなく、政治が世界を変えるはずだという確信が、力強く語らせる。1970年代の下院議員時代に始まり、上院議員、副大統領、そして、現在も一貫して温暖化の問題を訴えかける。

彼のこうした思いは、学生時代にであった教授の示す空気中の二酸化炭素の増加と温度変化のグラフだった。教授のフィールドワークは1950年代からのデータにより二酸化炭素の増加を示したが、もっと長期の変動は、南極の氷のコア・サンプルからは65万年前からの変化の様子が知れる。示しているのは、規則的に見える温暖化と寒冷化の繰り返し。しかし、最近の急激な二酸化炭素の増加は異常である。
ゴアのプレゼンテーションは、包括的である。温暖化が一転急激な寒冷化をうむ可能性も、海水の大循環系を示す。また、単なる温暖化の進行にとどまらず、極端な天候の変異がありうることもあわせて、データをビジュアルに提示する。
そして、結論としてうったえかけることは、『これは、「道徳の問題」である』という点。確かに、一人一人の「道徳の問題」の累積、とくに、アメリカ国民の決意は大きいであろうが、まずは、最大のエネルギー消費国であり、二酸化炭素排出国であり、京都会議の合意を批准しない世界ただ二つの国(アメリカとオーストラリア)が、政治的に同判断すべきか、もっと、明確に示すべきであったか。

人品卑しいせいかもしれないが、このメッセージには裏があるように思えてならない。つまりは、環境問題の解決が起業ベースになり始めている今、このような形で、アメリカのミッションとしてゴアが登場したように思えてならない。ゴア自身は、持続する志に基づき、一貫してメッセージを発してきたのであろう。しかし、彼をプロモートして、メッセンジャーとしたのは誰だろう。
おそらくは、環境問題がビジネスになったからではあるまいか。原油価格が高騰したために、一気にバイオエタノールが起業ベースに乗ったものと同じである。加えて、バイオエタノールと同じ背景が垣間見える。つまり、バイオエタノールは、食糧資源の再配分によって、貧しいものをますます貧しくさせ、飢餓を決してなくしはしないように、環境を技術を独占する先進国が、相変わらず、世界をコントロールするというメカニズムを相変わらず、温存させる。そして、世界の富のかたよりは続くのである。

地球温暖化を防ぐ、環境を悪化させない、といったメッセージにはなかなかうかつには抵抗できない。また、ゴアのような一貫してメッセージを出している人物にはは反論しにくい。
しかし、思うのだが、彼が、連邦最高裁の大統領選挙の裁定の際、抵抗を続けたら、どうだったのだろうか。あっさりと、混乱を避けるとの判断で、ブッシュに席を譲ったのだが、これは、ゴアの人の良さか。そして、今また、環境メジャー(おそらく、そんな企業があるのだろう)の意図を隠蔽するパペットとして、映像に登場。ちょっと、ゴアがかわいそうに見えた。

不都合な真実 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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