Sig’s Book Diary

関心本の収集

『月の森に、カミよ眠れ』

original: http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/9607bac47ce75e5f415d1d6b3865e6f6

上橋菜穂子、1991、『月の森に、カミよ眠れ』、偕成社

本書は、著者の第二作で「児童文学者協会新人賞」を受賞したそうだ。ネットでは、「もののけ姫」よりも前に、もののけ姫のように失われ行く精霊たちの物語であるということでの評価が高いようである。
私は、この作品と「守り人」シリーズとの違いを指摘しておきたい。「守り人」シリーズがいわば、「サガ」(北欧の叙事詩で、年代記のスタイルをとる)であるのに対して、本書は、神話(昔話)に材料をとった神殺しの物語となっている。この物語の神は、先住民の神でもあり、農耕に対する狩猟の神でもあり、新しい神に対する古い神でもある。この神が殺された後の神の語られかたが、重要であるという、重層的な構成となっている。
私の個人的な好みとしては、本作品をシリーズ化してほしいような気がする。「守り人」シリーズの最後の書の評でも書いたのだが、踏まえるべき神話が「守り人」シリーズでは指輪物語との類似ではなく、別の神話を踏まえるべき、と書いたのだが、本書に一つのこたえがあるように思える。違うだろうか。

本作品は、演劇として、上演されたようである。
劇団潮流 tayata-月の森にカミよ眠れ (2004年9月17日〜19日) 初演観劇録:http://www.ne.jp/asahi/yumi/koubou/moribito/tayata/report.html

月の森に、カミよ眠れ (偕成社の創作文学)

月の森に、カミよ眠れ (偕成社の創作文学)