Sig’s Book Diary

関心本の収集

『何も起こりはしなかった:劇の言葉、政治の言葉』

original:http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/fd86c80fa2758bc80707a4748337c40c

ハロルド・ピンター、2007、『何も起こりはしなかった:劇の言葉、政治の言葉』、集英社新書

2005年ノーベル文学賞受賞のハロルド・ピンターの劇作と政治に関わる発言集。
ソ連が滅びて、社会主義イデオロギーの実態が消滅したにもかかわらず、まだイデオロギーの幻影が生き延びている。それは、アメリカの政治。正義の味方のアメリカがこのイデオロギーを必要としているのだ。彼らの「人道的介入」の根拠を与えるのが、この幻影的イデオロギーだ。
ユダヤ人であるピンターでであり、徴兵忌避者、かつまた、イデオロギー的にマルクス・レーニンに組する訳でもないかれの政治的発言は、シニカルに人間性をえぐる彼の劇作をふまえると、いたってまっとうだ。しかし、アメリカのことばは空虚だ。それに従うイギリスのことを彼はもっと批判する。
ニカラグアのことが繰り返し出てくるので、本書を読み進めるたびにデジャブにとらわれるが、それは、それとして、心して読むべし。
ピンターの演劇も映画も見たことがないと思うのだが、今度、心がけて探してみることにしたい。

何も起こりはしなかった―劇の言葉、政治の言葉 (集英社新書)

何も起こりはしなかった―劇の言葉、政治の言葉 (集英社新書)